この建物は西宮市甲陽園の高台に位置し、そこからは神戸港や淡路島はもとより、晴れた日には遠く泉州沖の関西空港までも一望できるという最高のロケーションである。
初めてこの計画地に立ち、眼下に広がる大パノラマを目にした瞬間の興奮は、今も鮮やかに蘇えり、それは住宅の設計に携わる者として、いつかは出会ってみたいと思える程のものであった。
敷地は南北の高低差が6mの道路に挟まれた急な南向き斜面(地山)で、計画の基本として、その急斜面を荒療治せず敷地の持つ特性を可能な限り生かすこととした。
ドクターとして日々ハードに仕事をこなされているクライアントが、家族と共に快適に過ごすスペースと、仕事を離れプライベートにもどられた大切な時間を演出する場の構築を目指した。
オーバーハングした2階に位置するリビングでは、南面と北面すべてをガラスで透過し、眼前に広がる外部空間を限界まで内に取り込むようにした。それはまるで高い木に登り、遠くの景色を眺めているかのような「浮遊感」の創出を試みた。
玄関扉を開けた瞬間に誰しもその視線が中庭を抜け、リビングをも透過し、その先に広がる景色に暫し唖然とする。より強いベクトルを南に向けるために、東西面はあえてバッサリ遮断した。
住まい手と造り手がひとつになり、内と外が一体化した、心地良い空間が実現した。
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